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創作ドウワ

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遅くなったメリークリスマス

「あ~、今日も寒み~!」

ボサボサ頭のマサの朝の第一声がこれだった。

「冬だから寒いのは当たり前じゃん」 と口には出さず心の中で毒づく。

「仕事行くのがやんなっちゃうよね~」

と同意を求めながら大欠伸をするマサ。

それには返事をせず、朝のTVニュースを聞きながらメイクを続ける私。

「居候のくせに、まるで自分が働きに行くようなことを口にしている」 
と、また心の中で毒づいている。

朝の忙しい時間帯は、ゆっくりテレビを見ている暇なんかあるわけない。
それでもテレビをつけているのは、今の時間と今日の天気が知りたいからだ。
だから、テレビを見るというより聞いていると言った方が合っている。

さっき聞いた天気予報では、昨日よりさらに冷えるということだ。
夜には冷たい雨も降ってくるらしい。
「今日は何を着て行こう」、シャドウをひきながらそんな事を考えていた。

「朝飯の支度が出来たぞ」

マサが味噌汁をお椀に入れながらキッチンから呼んでいる。

ありがたい事に、マサは手際が良い。
さっきまで、くしゃくしゃな頭で大きな欠伸をしていたのに、もうさっぱりと
髪を整え顏も洗ってサッパリしている。

マサが来てから紅は最後にひくようになった。

マサは居候だから、いわゆる主夫をしてくれるのは助かるが、
マサと一緒に住むようになって、私の言葉使いが少し乱暴になった気がする。

マサと私の付き合いはほんの一週間前からだ。

マサを私は一週間前に偶然拾ったのだ。

拾ったというと変に聞こえると思うが、本当に拾ったのだ。




私は、4歳のクリスマスイブに父を亡くした。
父は私をとても可愛がってくれていたのを覚えている。
父が仕事から帰ってくると、私の指定席は父の膝の上だった。

私がチョコンと膝の上に座ると、父は嬉しそうに絵本を読んでくれた。
いろんな絵本を読んでくれたが、特に私のお気に入りは「くまのプーさん」だった。


いつものように、「くまのプーさん」の絵本を読んでくれている時だった。
絵本のイラストのプーさんの表情がすごく可愛かったので

「クリスマスのプレゼントはプーさんがいいな」と私が言うと

「そうだね、パパも欲しいな。じゃあパパと一緒にサンタさんにお願いしようか?」

そう言うと、一緒に目をつむり、天井に向かって両手を合わせ、二人でお願いをした事をうる覚えに記憶している。
そんな二人を母も嬉しそうに眺めていた。幸せだった。

そんな父がクリスマスイブの夜、車にはねられて亡くなった。
酔っ払い運転だったらしい。らしいというのは、犯人が捕まらなかったからだ。
ひき逃げに遭ったのだ。

父の遺体のそばに、くちゃくちゃになった「プーさんのぬいぐるみ」があったというこを
大きくなってから母が私に話してくれた。

私は泣いた・・・

それからの日々は大変だった。特に母が大変だったと思う。
わずかばかりの貯金を取り崩してなんとか生活していた。
台所の隅で途方に暮れて、泣いている母を見た事もたびたびだった。

母は生活のためパートに出る事になり、私は近所の託児所に預けられるようになった。

母が働くようになって、少し家計が楽になったのだろう、母がお化粧をするようになった。
キレイになる母を見るのはうれしかったが、同時に母の迎えが段々遅くなってきた。

母のお迎えが園の最後になることも当たり前になってきた。
その内保母さん達が、
「まだ迎えにこないの!こっちだって早く帰りたいのに!」
などと私の前でもお構いなしに話すのを、何度も聞くようになった。

それでも私は、母が迎えに来ると喜んで駆け出していた。

そんなある日、母が男の人と一緒に私の迎えにやってきた。
男の人は、ケーキの箱を持っていた。

母は、「新しいお父さんよ」と、私に向かってそう言うと、
のぞき込むように私の顔色を窺った。

私は無理して笑顔を作った。

しばらくして、私たちは「新しいお父さん」の家へ引っ越した。

「新しいお父さん」は文句なくいい人だ。とても優しく包容力もある。
悪さをすれば容赦なくしかる。
本当の父のようだ。それに母の事をとても愛しているのが子供の目からも
よく分った。

「新しいお父さん」を嫌いなわけじゃない。ただ、「パパ」を忘れたくなかったのだ。
だから、「新しいお父さん」に意味もなく反発した。困らせもした。
そんな素直じゃない自分が段々嫌になってきた。安っぽい自分に気がついたからかもしれない。

「家を出よう」

その時はじめてそう思った。

そのためにバイトをして貯金もはじめた。
高校の3年間はバイトをしまくった。

高校の卒業と同時に家を出ることにした。
もちろん、「新しい父」は反対したが、私は頑として譲らなかった。

母は何も言わなかったが、私が家を出る日の朝、
「健康祈願」のお守りと私名義の貯金通帳を持たせてくれた。
少しずつ貯めてくれていたという事だった。

東京へ出て、すぐにコンビニで働いた。バイトの経験があったからだ。
その後、仕事を転々として今の会社の事務として安定した仕事を得た。

何とか家賃5万のアパートなら生活出来るまでになった。
貯金も少しは出来た。

こっちに来て3年半経つが友達はいない。
職場でも口数が多い方でないので、周りになじめずにいた。誘われてもいつも断ってばかりいた。
自然と誰も誘わなくなった。もしかしたら嫌われているのかもしれない。

でも、私は今の「お一人様」の生活に満足している。というか慣れてしまった。

私は映画と、絵画の鑑賞が好きだ。一人でも楽しめるからだ。
年に何回かは美術館や映画館に足を運ぶ。

そんな美術館の帰りにマサを拾ったのだ。

「上野の森美術館」を夕方5時ころ出た。
12月半ば過ぎの5時はだいぶ暗くなっていた。それに何よりも寒かった。

公園の中を足早に歩いていると、暗くなったベンチに背中を丸めて寒そうに
震えながら座っている彼を見かけたのだ。

「寒そう」、それが第一印象だった。

それはそうだろう。もうじきクリスマスになろうというこの時期に、
彼はグレーのパーカーにジーンズという軽装で、コートすら着ていない。
震えて当然だと思った。
その彼の前を足早に通り過ぎようと横切った時だった。

「さ、寒い!」

と震える小さな声が耳に飛び込んできた。
辺りに人影は少なかった。明らかに彼以外の声ではない。
私はちょっと彼の事が気になった。不思議と怖さはなかった。

「どうかされましたか?」

私はおそるおそる声をかけてみた。
彼は、初めて私に気がついたのか「ビクッ」としてカオを上げて私を見た。

「住むところがないんです」

と、弱々しい声がかえってきた。

「エッ、もしかしてホームレス?」 咄嗟にそう思った。
「早くここから立ち去らなきゃ」と思った瞬間、

「お願いがあります」

今度はハッキリとした声で、じっと私を見つめながら彼が言った。
街灯の電球が切れかかった暗がりだったが、彼のカオがはっきり見えた。

彼は微笑んでいた。

「なんでしょう?」

と私は聞いてしまっていた。

「二週間だけ泊めて下さい。お願いします」

そう言うと、ぺこりと私に頭を下げてきた。

私は人から頭を下げられたのは初めてだった。
だからと言って見ず知らずの男を泊めるわけにはいかない。

「ごめんなさい」

そう言うと私はペコリと頭を下げて、足早にその場を立ち去った。

しかし、私は彼の事がひどく気になっていた。

公園内で売っている「ホットドッグ」と「ホットココア」を買って
彼の所に戻ってみた。

すると、彼の前に若い警官と年配の警官が二人立って彼と何か話していた。

少し離れていたところで私はその様子を窺うことにした。

年配の警官が

「君はここで何をしているの?」

「・・・・」

「君の住所は?」

「・・・・」

「君、年はいくつかな?」

「48です・・・」

すると、若い警官が

「ふざけるな!!警官をからかうんじゃない!」
「どう見たって20代なかばだろう!」

と大きな声を上げて脅かした。

「まあまあ!そう怒りなさんな。彼もびっくりしているじゃないか」
と年配の警官がたしなめると

「しかし、困ったなあ」
「本当の事を話してくれないと、君をこのまま帰すわけにはいかなくなるんだよなあ」

それを聞いた彼の体が 「ガクガク」 と怯えたように震え始めた。

警官もそれに気づき、こいつ、怪しいと直感したようだ。

「とりあえず、話の続きは署の方で聞こうか」

そう言うと二人の警官は、左右から彼の腕を掴み、なかば引きずるように歩き出した。

そんな時、彼の目線と私の目線がぶつかった。
彼の眼はひどく怯えているようだった。

その眼は私に「助けて!」と訴えかけていた。

気がつくと私は

「待って下さい」

と二人の警官に向かって声を張り上げてしまっていた。

「しまった!」 と思ったが、もう遅い。

私は、「彼の事が気になっている」という自分の「直感」を信じる事にした。

「お兄ちゃん!何してんのよ。も~!」

「お巡りさん。すみません~」
「兄は人見知りが激しくて・・・」

一世一代の大芝居だ。

「ご家族の方ですか?」と年配の警官が聞いてきたので

「そうなんですぅ」
「兄は人見知りがすごくて、だからぁ今日は久しぶりの外出だったんですぅ」

思いっきり甘えた声で二人の警官に愛想を振りまいた。
特に若い警官に向かって

「兄は、困ったことがあると誰にでもすぐバレるような冗談を言って、ごまかそうとする癖があるんですぅ」
「悪気は全然ないんですぅ。ほんと~にすみません~」

そう言って、下から上目使いに、申し訳ないような顔をして見せた。

若い警官は、年配の警官と目を合わせ、軽く頷くと、

「あっ、まあ何かした訳でもないし・・・、ちょっとした職質しただけだから」

そう言うと苦笑いをし、

「年末で物騒だから、気を付けて帰ってくださいね」

とねぎらってくれた。

私は、ペコペコ頭を下げながら、彼の手をとって急いでその場から立ち去った。

いつの間にか人だかりができていた。

人がまばらな所まで彼を引っ張って行った後、思いっきり息を吐いた。

「ふ~!」

「アンタ!一体何なのよ!」

思わず自分でもびっくりするほどの声を出してしまっていた。

すると、

「あははは」

「なによ!」

「あははは~!」

「人、バカにしてんの」

「あははは!あはあはあはははは~!!」

お腹を抱えて笑い出した。

「何がおかしいのよ!」


まだ、お腹を抱えて笑いながら
「君、最高の演技だったぜ!」

「誰のせいでやったと思ってんのよ!」

いつの間にか大きな声で怒鳴り散らかしていた。
自分でもびっくりした。自分にこんな感情があったなんて・・・

しかし、怒鳴ったせいで、さっきまでの緊張が一気にほどけた。
すると、なぜか急に可笑しさがこみ上げてきた。

「ふふふ」
「あははは~」

「ふふふふふ~!」
「あっはっはっは~!」


「ふっふっふっ~!」
「アッハッハッハッハ~」


「フッフフフフフフ~!」
「ハハハハハ~!」


お互いひとしきり笑った。

そばを通り過ぎる人達が、いぶかるような顔をして、少し離れて通り過ぎて行く。

それを見ると、また可笑しくなって二人で笑い出した。
「ヒ~ヒッヒッヒヒ~!」
「ウフ!ウフフフフフ!」


思いっきり笑ったせいか、体も心もポカポカしてきた。
彼も暖かそうだった。

こんなに笑ったのはいつ以来だろう・・・

ウキウキしている自分に気がついた。

買ってきた「ホットドック」を半分にちぎって彼に差し出した。

彼はそれを見て

「くれるの?」

私はそっと頷いた。

そうして彼は私のアパートの居候になった。


私は、男性をむやみに泊めるような分別のない女じゃない。

条件をつけた。

期限は二週間だけ。必要以上に外に出て変な噂が出ないようにする事。
もっとも大事なのは、絶対に私に触れない事。
この条件を破ったらすぐに出て行ってもらう。

この条件でマサは居候になった。
もちろん、マサを信じていたからである。
マサは約束をちゃんと守ってくれている。

マサ用の部屋は納戸にした。東京で家賃5万のアパートでは他に部屋などない。
一畳の狭い物置だが、寝るだけなら問題ない広さだ。マサも納得している。

家に異性がいるという事で、私もだらしない格好は出来なくなった。
女性の身だしなみとしてはいい事だと自分を納得させている。

なぜ、二週間だけなのか?家族は?この後どうする気なのか?
訊きたいことは山ほどあるが、お互いの事は詮索しないことにしてある。

私も家族の事や生い立ちなど話したくない。

仕事から帰ってくると、「部屋に明かり」が点いていて、「晩御飯が準備されている」

一人の食事が二人になり、仕事の愚痴も聴いて貰える。

うれしかった。



そう、あれからもう一週間たったのだ。残りあと一週間。

今夜はクリスマスイブだ。
味噌汁を飲みながら私はマサに提案した。

「今日はイブだから、映画でも観に行って、帰りに美味しいもの食べてお祝いしない?」
「早く帰るようにするからさ?」

するとマサは、困ったように

「ちょっと言いそびれて・・・、でも、今言おうと思ってたんだけど・・・」
「ゴメン、今日と明日は人と会うんだ」
「だから、今日帰ってきてもご飯の支度は出来てないよ」
「ホントにゴメン」

「ううん、わかった」
「別にいいの」
「いつもの事だから」

そう言って私は無理して笑顔をつくった。
二回目だった。

仕事から帰ってみると、もしかしたら、と淡い期待をしたが、本当に彼はいなかった。

しかし、クリスマス用の料理がテーブルの上に準備されていた。
鳥のもも肉のロースト、ポテトフライ、赤ワイン、

手紙が添えてあった。

メリークリスマス!
仕事お疲れ様。今日も頑張った君に特別ディナーの準備しちゃいました~。

手を洗って、うがいをして、ちゃんと温めて食べるんだよ。

冷蔵庫にはデザートのイチゴと、モンブランもあるからね。
だけど、全部食べるとおデブになること間違いなし!!

戸締りは忘れずに!!

マサは明後日の夕方帰りま~す。


「何がデブるだ」
余計な事を!

涙が出ていた。うれし涙だ。

その日は8日ぶりの一人での食事になったが、寂しくなかった。

翌朝起きると、朝ごはんの味噌汁が出来ていた。

私は、「マサいるの!」と大きな声をだして、風呂場と、トイレをのぞいた。
納戸も覗いたが当然のようにマサの姿はなかった。

しかし、おかげで元気に仕事に行けた。


今日はうれしい事があった。

営業の「k」が私に告白してきたのだ。

「昨日のイブに誘いたかったんだけど。他と約束があったから」
「だから、今日良かったら夕飯一緒に食べに行けないかな?」

私はビックリしてしまった。
はじめての事だった。

「ごめんなさい!」

恥かしさと戸惑いから、思わずそう言って、その場から逃げだしていた。

彼は女子から人気がある。
私から見ても「カッコいい」と思う。
仕事も出来るし、マスクもイケてる。何より優しい。

外の自販機で、お金を落として困っていたお爺ちゃんと、一緒になってお金を探している「k」を偶然見かけた事があった。
しかし、なかなかお金が見つからず、それを見かねた他の二人も一緒になって探す羽目になったことがあった。彼の人柄が周りをそうさせていたんだと思う。

彼の周りには自然と人が集まっていた。

そんな彼から食事に誘われたのだ。
「うれしいに決まっている」

しかし、なにか違う気がする。

帰り間際、「k」から声をかけられた。

「さっきは脅かしたみたいで悪かったね」

「・・・・」

「だけど僕の気持ちは一緒だよ」
「今日が無理なら都合のいい日を教えてくれないかな」

「・・・・」

「僕の事、嫌いかい?」

「・・・・」

「そうだよね、急にこんなこと言われたら誰だって警戒するよね」
「だけど、何も言わなくていいから、話だけでもきいてくれないかな?」

私は頷いた。

彼の真剣さは伝わってくる。
だから、彼に対してそのくらいの誠意は示したいと思った。

「よかった~!」

「k」は急に笑顔になった。

「実は、最近までの君は、そのう・・・」
「なんていうか、とても近寄り難いオーラが出ていたんだ」
「ごめん、誤解しないでね」

彼は、申し訳なさそうに人差し指で頭をかいた。

「だけど、ここ4~5日の君は、なんていうか・・・」
「うまく言えないけど、スッゴクいいんだ・・・」
「可愛いらしくなった」「愛おしくなったんだ」

「バカらしいと思うかもしれないけど、君は、僕にとって大事な人なんだ」

「だから、よかったらお付き合いして下さい」

私の目をまっすぐに見て「k」がそう言った。

「返事は何時でもいいけど、ダメなら早く言ってね」

と「k」は、またアタマを掻いた。

よく見ると、額に汗がびっしょりなのがわかった。

「真剣だとわかる」

「だけど、返事が仮にノーだとしても簡単に諦めないけどね」
そう言って「k」はハニカミながら笑って

「お疲れ様、また明日ね!」

そう言って手を振って私を送り出してくれていた。


「ぼーっ」とした気持ちで電車に乗っていた。

家へ帰るとやはり明かりは点いていなかったが、昨日と同様夕飯の支度がされていた。

手紙には、

本当は今日がメリークリスマスなんだよね!
だから改めて、
メリークリスマース!

今日は、マサ特製のステーキです。

どうだぁ! すて~きだろ~

冷めないうちに早く手を洗って食べてね

マサより


何がすて~きだろ~よ!
オヤジギャグ丸出しじゃないの!
と毒づきながら「フフ・・」と苦笑いをしてしまった。

次の瞬間、「エッ、冷めないうちに・・・??」
ラップの上からステーキの表面を触ってみる。

「温かーい」 「もしかして今作ったばっかなの?」
そう思い、周りをキョロキョロしたがマサがいる気配はなかった。

「話たい事があるのに・・・」
「肝心な時にいないんだから・・」

そう、心の中で文句を言ってみた。

夕べの「赤ワイン」でステーキを食べた。
「柔らかーい!」

マサは食事ちゃんと食べてるのかな?そう思っている自分がいた。


次の日の朝、お味噌汁はなかった。

マサの事は心配だったがどうしようもない。

「今日、マサが帰ってきたら根掘り葉掘り訊いてやるんだから!」

そう思いながら、今朝は朝ごはんを抜いて仕事に出かけた。

仕事中、「k」の顏をまともに見る事が出来なかった。
だけど、気がつくと彼の姿を探している自分がいた。

「k」は、視線が私と会うと「ニコッ」と可愛い笑顔を返してくれたが、
私は、下を向いてしまう。そのくせ、また彼の姿を探していた。

終業のベルと同時に私は会社を出た。

「マサが帰って来ている」

そう思うと駅まで小走りになっていた。

家の前まで来て「窓」を見る。

そこには「灯り」が灯っていた。

うれしくて、大きな声で

「ただいま~!」

と言って玄関を開けて中へ入った。

「おかえり」

そう言ってマサがいつものように優しく迎えてくれた。

私は、マサの胸の中に飛び込んでいた。

マサは優しく受けとめてくれた。

「心配かけてゴメンね」

マサはそう言って私の頭を撫でてくれた。

マサは私の目の高さに腰をかがめ、

「触っちゃたね。出て行かないといけないね」

そう言って、イタズラっぽくウィンクをしてみせた。

「マサのバカー!」

思わず怒鳴ってしまった。

「ゴメン、ゴメン」マサは笑って謝った。

「夕飯の準備が出来てるよ。早く手を洗って、うがいしておいで」
そう言って私の背中を押した。

話すことが山とあった。

開口一番
「今までどこに行ってたの?」

食事を終え、ココアを飲みながらマサに訊いてみた。

マサはコーヒーを飲みながら、

「う~ん、話すと長くなるから、後でね」
「それより、クリスマスはいい事あったみたいだね?」

「どうして分かるの?」

「そりゃ~付き合いが長いからね」
そう言って、マサは笑っていみせた。

「実は、職場のkさんにお付き合いしたいって言われたんだ」

「で、どうなの?」

「どうなのって言われても・・・」
「マサはこれを聞いても何とも思わないの?」
「私は、マサが好きなのよ」

これにはマサは、ビックリした様子だった。

「もう夜遅いから寝ようか」
「明日は休みだから続きは明日にしようよ」

マサはそう言って自分の部屋に引き上げて行った。

私は一人取り残されてしまった。

一世一代の大告白だったのに

涙が出ていた。

その夜はなかなか寝付けずにいたが、いつの間にかトロトロとして
浅い眠りにつくことが出来た。

そこに、襖が「スーッ」と開く気配があった。

私は眠ったフリをして身構えた。

「ガサッ」

何かが私の枕元に置かれた音が聞こえた。

しばらくして、優しい手が私の髪を撫でてきた。

やさ~しく、やさ~しく

私は、安心して夢の中へ入って行った。

私は夢を見た。

父の膝の上で、いつものように絵本を読んでもらっている。

「ネエネエ、パパ、パパ」

「なんだい?」

「クリスマスのプレゼントは、プーさんが欲しい」

「そうだね、パパも欲しいな」
「じゃあ一緒にお願いしてくれる?」
「モチロンだよ」

私はパパの顏をのぞき込んだ。

あっ!マサ!

目が覚めた

枕元には大きな包みがあった。

私は、その包みを大事なもののようにゆっくりと開いてみた。

中からは、あの「クマのプーさん」が出て来た。

「なんで!」

私は泣いていた。

すぐにキッチンへ行ってみた。

誰もいなかった。

マサの物置を開けた。

やはり誰もいない。

「パパー!」「パパー!」

大きな声を上げて呼んだ。

しかし、返事はなかった。

「まだ約束の二週間経ってないのに」

私は大粒の涙をこぼしていた。

テーブルの上に味噌汁と「手紙」が置いてあった。


ユウちゃんへ

ずいぶん遅くなったけどクリスマスのプレゼント
気に入ってもらえたかな?

ずいぶん大人になっていたんでビックリしたよ。
まるで付き合い始めた頃の、「ママ」を見ているようだった。

どうしてパパが急に現れたか、不思議に思うだろうね。

その前に、サンタさんは本当にいると今でも信じているかな?
人は大人になると、サンタさんは架空の人なんだと気がついて
しまうもんだよね。

だけど、本当はサンタさんはいるんだよ。

もちろん、子供たちにおもちゃのプレゼントをする訳じゃないけどね。
もっと素敵なものをみんなに、大人にも、子供にも、公平に届けているんだよ。

みんな大人になると、それを感じ取れなくなってしまうんだね。
パパもそうだったよ。だけど、気がつく人はいるんだよ。
ユウちゃんもそれに気がつく大人になって欲しいな。
ただ、感じるだけでいいんだよ。そうすると心の中で何かが変わるんだ。

パパは、サンタさんのお手伝いをするという約束で二週間だけ
ここに居られる事になったんだ。一回だけだけどね。

だから、パパと同じような人はクリスマスには、いっぱいいるよ。

そのためには、二つだけ決まりがあってね。

正体がバレてはいけない。
ウソをついちゃいけない。

まあ、ウソについては都合が悪いときは、黙っていればいいんだけどね。
だけど、つい、お巡りさんに「48です」なんてホントの事言っちゃって
あの時は危なかったね。

こうやってユウちゃんに「正体を明かす手紙」を残すのも、いけないんだけどね。

だけど、ちょっとだけなら大目に見てもらえるんだ。

どうしてかって?

それは、ヒミツだよ。

会社の「k」さんの事だけど、君が選んだ人なら間違いないよ。
君の事を気に入るなんて、そいつ、「見る目」があるじゃないか。
パパはとてもうれしいよ。

君をここまで立派に育ててくれたママと、パパの代わりに育ててくれた方
感謝してるよ。

パパは、その人の顏も名前も知らないけど、ユウをここまで立派に育ててくれたんだから
ユウを見ればその人の人柄はよくわかるよ。

もちろん、ユウが頑張ったからこそ今があるんだよ。

それじゃ、そろそろ行かないと。



一気に読み終えた

すると、手紙が徐々に薄くなっていき数秒後には手から消えていた。

「パパァー!」

私は顏を両手を覆って泣いてしまった。

ひとしきり泣いた後、パパが作ってくれた「味噌汁」を飲んだ。
不思議な事に、全く冷めていなかった。

飲み終わると私の気持ちの何かが変わった。

とても穏やかな、すがすがしい気分になったのだ。

パパと過ごした、パパに大事にされた、あの10日間で私は変わった。

私は、3年半ぶりに実家に電話をした。

「新しい父」が出た。

私は、初めて「お父さん」と呼んだ。

「今度のお正月に帰るから」と連絡した。

「ママ!、ママ!ユウが、お父さんだって今度帰って来るって!

と電話の向こうでお父さんが嬉しそうにママに話しているのが聞こえた。

今まで、言いたかったけど言えなかったことが、やっと少しだけど、言えた

「帰ったら、ちゃんとお礼を言おう、それに謝らなくちゃ」

何をお土産に持って行くか考えている自分がうれしくなった!

「ありがとう、パパ」


カズーイの冒険 61

「えーっと、それじゃ続きを話すよ」

と、少し動揺から立ち直ったガボが、テルの顏をチラッと窺ってから
続きを話し始めました。

テルは、ガボの視線に気づくと目を伏せてしまいました。

「昼少し前になってから、長老を先頭に僕たち三人はあの森に向かって出かけたんだ」
「長老のナナとヨシのおかげで大分気持ちが軽くなったけど、あの場所に
近づくにつれ段々と足が重くなってきたんだ」
「本当に、それほどあの時のマザードンキーの顏が怖かったんだよ」

「それに気がついた長老が、俺たちの方に振り返り、とびっきりの笑顔で」

「お前たち、なあ~んも悪いことはしてないだから心配すんな」
「安心しろ、オレがついてる」

「あの小さな体のどこにそんな勇気があるのか判らなかったけど、その勇気に励まされたんだ」
そう言うとガボは、「フウ~」 とひとつ、大きく息をつきました。

「俺たちはその時、勇気って体の大きさじゃないな、度量の大きさで決まるんだな。と
つくづく思ったよ」


「そーだよな」とケンも頷いて、

「後で長老から聞いたんだけど、長老も実は怖かったらしいよ」

そうケンが少し笑って言った後、

「だけど、自分に子供や守りたい人が出来ると不思議と踏ん張りがきくようになるんだってさ」

ケンが頭をポリポリ掻きながら長老から聞いたことを話しました。

ガボはみんなの関心がどの程度かと、周りを見渡しました。
周りのみんなは、ジッとガボの方を見て話しの続きを促しているようでした。
テルとも視線が合いました。

今度は、ガボがあわてて視線をそらしました。

少し間をおいて、ガボが話の続きを始めました。

「あ~、おっほん、おっほん」
「約束の場所に着くと先頭に立っていた長老が」

「おい!、あれは何だ?と指をさしたんだ」

「指の指した方を見ると、この島では数少ないバナナが山と積まれていたんだ」

「一体どうしたんだ。この大量のバナナは?と唖然としていたら、急に長老が」

「肝心のマザードンキーがいないじゃないか!」

「その言葉を聞いて俺たちも我に返り、周囲に目を向けマザードンキーを捜したんだ」
「だけど、どこにもマザードンキーの姿は見当たらなかったんだ」

「マザードンキーがいないとわかると、にわかに元気が出て来たよ」

「かあちゃんの悪口を言うな!」
ドンキーがまた興奮して大きな声を出してしまいました。

「ドンキー、誰もお前の母ちゃんの悪口なんかいってないよ」

ケンはそう言ってドンキーの首のあたりを「ポンポン」と撫でてやりました。

「ドンキー、もうちょっと我慢してくれ、これからがお前の母ちゃんのいいとこだから、な?」

ガボがそう言うと続きを話し始めました。


Appendix

プロフィール

ガボテンマサ

Author:ガボテンマサ
どうわへようこそ
娘が幼稚園の時に創作したお話をアレンジして、少しづつアップいます。
読み続けるとどんどんはまっていく内容だと思います。

感想などお聞かせもらえればさらなる励みになります。
悪態でもかまわないので足跡を残してくださいね。

サイト運営者メールアドレス
gaboten@tbz.t-com.ne.jp

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